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思い込みは、恐ろしい
 「思いこみ」というのは恐ろしいものだ。自分にも日々の生活や仕事の中で、
ついつい思いこみでとんでもないことをやっていることはよくあるのだが、先
日、大いなる思いこみに遭遇した。

 ある大学で、就職指導の一環で履歴書の添削をしていた。約300枚の履歴
書に1枚1枚、目を通していたら、ある学生が学歴欄の大学名に「○○学院大
学」と書いているのに気が付いた。その大学は「○○学園大学」が正しく、何
を遊んでいるんだと思って赤字で「真面目に書け」とコメントした。
 そもそもその学生、名前と顔が一致している男子で、質問もトンチンカンな
ことが多く、考え方も変わっている奴なので、「遊んでいるな」、もしくは私
がきちんとチェックしているか試しているのか、とも思った。

 履歴書を返却するとき、その学生が受け取りに来たので思わず「おい、遊ぶ
なよ。真面目に書けよ」と声をかけた。そのときは、彼自身、何を言われてい
るのわからないのかきょとんとしていた。
 授業が終わって教壇を降りようとしたとき、その学生が履歴書片手に走り寄
ってきて「佐藤さん、この真面目にて書けって何のことですか」と聞いてきた。
こんどは聞かれたこちらが、きょとんとしてしまう。「大学名のところ、そり
ゃなんだ」と言うと、学生は「何だって、ここは○○学院大学ですよ」ときっ
ぱりと言う。
 もしかしたら…と俄に大きな疑惑が頭に浮かぶ。他の学生が2人、まだ席に
座っていたので「おい、ここはなんて言う大学だ」と聞くと、何を聞いている
んだと言う顔をして、これまたきっぱりと「○○学園大学です」と答える。
その瞬間、件の学生の顔から血の気がすっと抜けた。

 学生は入学以来、どこでどう思い違い、思いこんでしまったのかわからない
が、ずっと自分のいる大学は「○○学院大学」と信じ込んでしまったようだ。
それも2年半である。本人の弁では、一緒に住んでいる親も同じだという。し
かし、入学金や授業料のとき振込先で名前は見ているだろうに。ちなみに、こ
れまで2回バイトをやってきて、2回ともバイト先に提出した履歴書には堂々
と「○○学院大学」と書いてきたそうである。バイト先にとっては大学名は何
でも良かったのだろう。

 というわけで、彼の大いなる思いこみは終止符を打ったが、彼は最後に「履
歴書、企業用に提出する前に気が付いて良かったです。気が付かずに出したか
と思うとゾッとします」とお礼を何度も言ってか帰っていったが、くれぐれも
言うが2年である。それまでに気が付くチャンスはたくさんあったのだろうが、
なぜ…である。という訳で、私は一人の将来ある若者を思いがけず助けたので
あった、…かな。

             (2006/01/23 人材開発メールニュース第368号掲載)


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